呼び声

とあるところにて怖い話をすると聞いて、なんか張り切って作ってた創作怪談その1。

 これはとある村の方から聞いた話なんですが。
 その日は随分と寒く、朝に霜が降り、空は雲がかかり、その内天気が崩れそうな塩梅でした。友人と狩りをする約束をしていたその方は、天気が悪いから延期にしようかと提案したのですが、友人は翌日の祭りに間に合わせたいからと強く言うので、やむなく森へ入ったのです。
 森の中は更に暗く、一足先に冬が来たような寒さで、やや足踏みしたのですが、友人が突き進むのでそれについていったそうです。ただ、その日は不思議なほど森の中に獣がおらず、妙だなと思いつつも、友人の言葉に従って森の奥に進んでいきました。
 いつもは行かないような場所まで進んでしまったところで遂に雨が降り始め、二人は近くにあった大木の傍で雨宿りをすることになりました。その雨は長く降り、このままでは帰るのが遅くなると覚悟し始めたその時、その方は隣にいる友人の様子がおかしいことに気付いたのです。雨に濡れたことにより寒いのか、ガタガタと震えているのですが、ぼうとした様子で、こんなことを口にしたのです。
「あ、あつい。なあ、あつくないか?」
 その方は友人に「いや、寒いと思うが。というか、お前も寒いだろう、そんなに震えて」と声をかけたのですが、友人は
「そんなことはない。あつい、あつい!」
 と叫んだかと思うと、急に服を脱ぎ始めたのです。その方は服を脱ぐなと宥めながらも、友人の様子にあることを思い出しました。
 彼らがいる森には、古くからいくつかの曰くがあり、その中の一つとして、秋の祭りが近い日に森に入る悪魔に狂わされる、というものがあるそうです。悪魔に狂わされた者はすぐさま森から出さねばならず、森に残すと悪魔に喰われるというそれを思い出したその方は、急いで友人を森から出さなければと考えました。
 友人は相変わらず「あつい」と叫んで服を脱ごうとするので、その方は友人をなんとか取り押さえ、狩りの獲物に使うために持ってきたロープで友人を縛り上げ、彼を引っ張っていったそうです。勿論引っ張っている最中も友人は喚き暴れていたそうですが、幸いその方は村の中でも力自慢の部類だったので、なんとか友人を引っ張っていくことができました。
 そうして森の中を進んでいると、やがて遠くから「おーい」という声が聞こえてきたそうです。村の者かとも思いましたが、その声に聞き覚えがないと気付き、友人を喰いに悪魔がやってきたのだとその方は恐怖しました。それで、声の方には目もくれず、やや早足でその方は森を突き進みました。
 その内、「おーい」という声の他にドスドスと重い足音のようなものが聞こえ、その音と声がつかずはなれずの距離でついてきていると気付いた時には、それはもう肝を冷やしたそうです。
 どれほど歩いたか、ようやく木々の隙間から村が見え、その方は安堵しつつも、更に足を早めて森から脱出したそうです。そうして、それまで引っ張っていた友人の方を見ると、彼はもはや引きずられている状態だったのですが、その足先、靴だけがなくなっていたそうです。
 その友人ですが、彼は村に戻った後、安静させるとあのおかしな様子はなくなり、寧ろ森の中での記憶が途中からないとのことでした。そして、後日他の村人が森の中に入った時、友人の靴が片方だけ落ちていて、しかも靴には大きな歯型がついていたとのことでした。

実は矛盾脱衣とクマを組み合わせた話。

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