1.一日目終了時のモノローグ
くぐり桜のことを知って、なんとなく、ああもしかしてと、思ってしまった。
私はたしかに、あの時「お姉ちゃんの体が良くなりますように。病気が治りますように」と祈ったはずだ。でも、その頃には既にあの人が好きだった。
十年前はまだ中学生だった。だから、「お姉ちゃんさえいなければ、振り向いてもらえるかな」と思ったことがないと言えばきっと嘘になる。もう記憶は薄いが、そう思ってしまった可能性もある。もしかしたら、あのくぐり桜は、私のその願いを読み取ってしまったのかもしれない。
それが原因で、お姉ちゃんが。
いや、そんなことはない。いくら願い事が叶うと言っても、それは迷信だ。そんなことがあるはずはない。
でも、お姉ちゃんの幽霊が出たという話を聞いてしまった。本当に幽霊がいるなら、願いが叶うなんてことも、あるかもしれない。
あの人もくぐり桜のことを聞いてショックを受けていたように見えた。もしかしたらあの人も、何かくぐり桜に願い事をしたのかもしれない。でも、きっとあの人のことだ、純粋にお姉ちゃんの病気が治るようにと祈ったはずだ。
もしくぐり桜に願ったせいでお姉ちゃんが死んだなんてことがあれば、きっとそれは私のせいだ。
だからというわけではないが、お姉ちゃんの幽霊が本当にいて、もし私にできることがあれば、できる限りのことをしよう。
死んでほしいって言われたら、どうしようかな。昔死にかけたことがあったけど、あの時に来なかった番が回ってきただけ、と思うべきなのかな。できれば、死にたくはないなあ。