3.ちょっとした後日談
ぱらりとページをめくり、記述を追う。だがそこに望むところはない。
「やっぱり、難しいんだな」
西鳥羽から何か聞き出しておくべきだったかと思うが、しかしあれでは完璧ではない。とはいえ、このままでは情報を得るのは難しい。
やはり転職をすべきだろうかと思いつつ、一旦本を閉じる。時刻を見ると、そろそろアルバイトに向かう時間だ。荷物と引っ張り出してきた本を片付け、燐は図書館をあとにする。
あの一件があった後、燐は姉の蛍子を蘇らせる方法を探し続けていた。ひとまずは近場、あの女が探し回っていたであろう範疇を周り、願いが叶うという系統のものは片っ端から試してみたが、残念ながら何一つ成果は出なかった。死者が蘇るという伝承も当たってみるが、どれも空振りに終わった。
この地域では、あれしか方法がなかったのだろう。
燐はそう思い、故郷を完全に離れることにした。知り合いに何か探られるのは面倒だったので特に理由は話さず、両親には適当な理由を建前として話し、ほぼ身一つで飛び出した。
飛び出した後は、生活費と次への旅費をアルバイトで稼ぎながらその地域の伝承を調べ、実践してみる。それでダメならまた別の場所へ向かう。
幸いというべきか、願い事が叶うという伝承はあちこちにある。その中のどれかに、絶対に本物があるはずだ。それを探し出し、そして、今度こそ姉を蘇らせるのだ。
「お姉ちゃん、待っててね」
いつかと同じく、その言葉を口にする。そう口にする燐は、いつでもうっそりと笑っている。
きっと彼女を知る者がその姿を見れば、とても正気とは思えないと言うだろう。燐は半ば、それも自覚していた。もう自分は正気ではない。でも、それでいいのだ。姉さえ取り戻せれば、もう、それだけで、いや、それしか。
そうして彼女は今日も、自身の願いを叶えるべく、調査をし、行動をする。例えその過程で何があっても、彼女が止まることはないだろう。