3.いつかの未来、あるいは今見る夢
共演者の一覧を見て、主役の名前に五十嵐五郎の名前があることを確認し、悠一は遂にこの時が来たと笑みを浮かべた。しかも今回悠一は悪役で、主役と何度も正面でぶつかる役だ。おあつらえ向きと言っていいだろう。
「やればできるじゃないか」
約束していた数年以内というのもきちんとクリアしているし、周りの評判を聞くにめきめきと実力を伸ばしてきたと評判になっている。
「さて、僕も頑張らないとな」
そうこぼし、持っていた共演者一覧をテーブルに置き、迫田に連絡する。
舞台の日程としては丁度今年最後の予定にしていたものだ。来年以降の舞台についてもいくつかオファーはあるが決まってはいない状態だった。そういう意味でも、丁度いいタイミングだった。
「迫田さん、舞台なんだけどね、今回ので最後にしようかなと思ってて」
電話口でそう言いつつ、今後の予定を考える。
ひとまず、顔合わせの時には何食わぬ顔で初めましてと言ってやろうと思う。果たしてどんな顔をするだろうか。