溢れる後悔と
ああしくじったなと、次郎は後悔した。
寛太郎が心配というより、この女について行って、元凶となったであろうあの絵を壊そうと欲を出してしまったのが良くないのだろう。
わかっていたが、しかしここから引き返すこともきっとできない。周囲はどこまでも続く森で、女と寛太郎と三人であてもなくさまよっている状態だ。
きっともうここから出られないだろう。
寛太郎をもっと強く止めればよかったとか、二人を放って先生を病院に連れて行った方が良かったか、もしくは捕まる覚悟で家を丸ごと燃やしてしまえばよかったか。
あの時ああすればよかったかと様々なことを考えるが、今となってはどうしようもない。
それでも、次郎は少しばかり、安堵していた。
きっと自分達はここから出られないだろう。二度と日常に戻れないだろう。そして同時に、故郷で見たようなものは二度と見ることはないだろう。
次郎としては、そちらの思いが少しあった。
「ねえ、もしかしてこれ、まずいかなあ」
寛太郎がちらとこちらに話しかける。まずいはまずいだろう。しかし、それを今言っても仕方ない。
「わからない。絵が見つかれば、それ壊せばいいかと思ったけど、この調子じゃ」
周囲に視線をやると、寛太郎はますます不安そうな表情になる。きっと自分も似たような表情なのだろう。
しかし、きっともう、自分達は手遅れだし、どうしようもないのだ。