鏨耕助のレポート

インセイン「ラスト・ローズ」の感想ふせったーまとめと、キャラのボツ設定と、小話たち。

鏨耕助のレポート
 あの長い道を戻り、そして綿貫と駅で別れた後、耕助は駅の近くにある本屋に立ち寄った。本屋の文具コーナーを一周した後、現在不足気味のクレヨンを購入した。
 自宅に帰って、購入したものをテーブルの上に置き、手洗いうがいをする。ついでに何か余計なものがついていないか鏡を見て確認し、何もないことに息をつきつつ、コーヒーを入れる。
 コーヒーを片手にテーブルに戻り、席に着く。足元に置いてある画材を乱雑に入れた箱をテーブルの上に置き、その中に今日購入したクレヨンを入れる。箱の中を少しの間眺め、その中から必要な色のクレヨンと水彩色鉛筆を取り出し、テーブルに並べ、箱は足元に戻した。
 テーブルの端に置いたやや薄いスケッチブックを取り、表紙をめくる。真っ白な紙に色鉛筆でいくつかの形を描き、色鉛筆で描いたものを避けるようにして周囲をクレヨンで塗りたくる。いくつかの色を重ねて塗っていき、それが終わると水筆を持ってきて色鉛筆で描いた箇所に色鉛筆の色をぼかしていく。
 作業が終わったところで、色が塗られた紙をスケッチブックから切り離す。切り離した紙だけを撮影し、それを小型のプリンターで印刷し手帳に貼り付けた。手帳の余白部分に、今日あったことをざっと書き、手帳を閉じた。その後、色が塗られた紙を手で破いてゴミ箱に捨てる。
 一連の作業を終えた後、冷めたコーヒーを飲む。ふうと息をつき、天井を見る。
「吸血鬼とは、初めてだったな。いるところにはいるものなんだな」
 長らく怪異に関わってきたが、一般的にメジャーな怪異には初めて遭遇したなと、耕助は改めて思う。何せこれまで耕助が出会ってきたのは、大概が幽霊、あとは付喪神の類、名前はついているらしいが耕助は知らない妖怪など、そういったものだ。そんな調子だったので、耕助でも名前を知っているような怪異など本当にお伽噺の類ではないだろうかと思っていたのだ。しかし吸血鬼がいるのならば、他のメジャーどころも実在する可能性が高くなってきた。今後遭遇する可能性もあるだろうし、文献などある程度見ていた方がいいだろうか。
 ここまで考えて、いやと思い直す。
「今回が例外なだけか」
 そもそも、耕助は犬猫の捜索、あるいは失せ物探しがメインであるし、それ以外で外とのかかわりはない。であれば、今後そんな大物と出会うこともなかろう。吸血鬼の知り合いはできたが、きっと彼が最初で最後になるはずだ。
 そう考えた後、綿貫からもらった名刺を取り出す。じっとその名刺を眺め、ため息をついた。
 これきりか、もしくは今後付き合いが続くかはわからない。しかし、できれば。
「いや、やめとこう」
 首を横に振り、名刺をしまった。

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