白猪くんは案外運がいい
羽生田と沼倉が飲みに行った翌日。白猪は福引券を片手に商店街に来ていた。
羽生田があそこまでカニを熱望していたが、正直白猪としては、ここ最近の運は先日の霧島に関わる事件で使い果たした気がする。危うく死にそうな目にもあい、よく生きていたと思うことが多々。その辺りの件で、当面の運は使い果たした気でいるのだ。
「うーん、当たる気がしないっすねえ」
とはいえ、羽生田に期待されているし、他に引きたがる者もいなかった。なので、潔く玉砕してくるしかあるまい。
「お、白猪くんじゃん!」
昨日こそ茶葉を買った店の店員が受付に立っていた。彼の店には、よく興信所で使う茶葉を買いに行くため、そこそこに顔見知りなのだ。
「どうも〜、引きに来たっす!」
「はいよ。……お、二枚か」
「さっきレターセット買ったら、店長が今日で自分とこの配布は終わるから持ってけって渡してくれて」
「あ〜、なるほどな。うちも多分同じことしてるから、あんま言えんな。じゃ、二回な」
「ちなみに、一等ってまだ出てないっすよね」
ボードには残っているが、実際はもう出たがそれを隠している可能性もあると思って聞いてみると、茶屋の店員は大丈夫だと頷く。
「まだ残ってるよ」
「お、良かったあ」
そう言いながら、一回目を回す。しかし出てきたのは白い玉だ。
「残念〜。ティッシュだな」
「はーい」
予想通りの結果になったと思いつつ、もう一回回す。
ここ最近、先輩は大変だったし、浅見兄妹はまた大変なことに巻き込まれたし、先輩と同中らしい沼倉さんも部下があんなことでしかも警察署が爆破されて大変だったのだし、彼らを労う意味でも当たったらいいな〜。
なんてことを考えながら回すと、カツンと金色の玉が出てきた。
「お、縁起がいい色」
思わずそんなことを言った直後、近くでカランカランと鐘が大きく響く音がして、白猪はびくりと肩を震わせる。
「一等、カニ食べ放題団体ツアー招待券当選〜! おめでとうございます〜!」
「……え、ええええええ!?」
その後招待券を受け取り、とりあえずと羽生田に電話する。この後は終業間際まで興信所には戻らないのだ。
『白猪? どうかしたのか?』
「せ、先輩、マジで当たっちゃいました」
『……は?』
「福引、カニ旅行当たりました!」
『っ、でかした白猪!』
「十人まで行けるらしいんで、先輩、沼倉さんとか呼んだらどうっすか?」
『え』
「飲みに行くくらいにはまた仲良くなったんすよね。折角だし、この前の事件の慰労会みたいな感じで、どうっすか?」
『あ、ああ、そういうことか。……そうだな、声だけかけてみよう』
「よろしくっす。浅見さん達には俺から連絡しとくんで!」
電話を切り、即座に形人の方に電話をかける。
「あ、白猪っす。形人さん、カニ食べ放題団体ツアー当たったんで、衣久さんとか和田さんとか連れて、一緒に行かないっすか? 今回の事件の打ち上げとか、そんな感じで!」